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Strategic Behaviorとは何か

法務系 Advent Calendar 2019 補遺

· 法務論,逆引法務

1. Strategic Behaviorとは何か

皆様、あけましておめでとうございます。2020年もどうぞ宜しくお願い致します。2018年及び2019年の12月に「法務系 Advent Calendar」のコンテンツとして「Strategic Behavior for a Legal Person」(戦略参謀としての法務担当者の在り方に関する一考察)と題する試論を投稿させて頂きました。拙稿をご高覧頂いた方から「そもそもStrategic Behaviorとは何なのか?」というご質問を頂きましたので、年末の投稿の“補遺”として、私なりの理解を整理させて頂ければと思います。

特に講学上の整理というわけではありませんが、私は、いわゆるprofessional skillを下図のように理解しています。Strategic Behaviorは、プロフェッショナルとしてのハード・スキルの一種ではあるものの、「PPTを用いたプレゼンテーション能力」「Excelを用いたモデリング技術」「語学力」「財務・会計・法務に関する知見」といった“狭義のハード・スキル”とは異なる“プロフェッショナルとしての振る舞い”と理解しています。より誤解を恐れずニュアンスを強めると“プロフェッショナルっぽい振る舞い”です。つまり、“狭義のハード・スキル”が一朝一夕でマスターするものではなく、時間をかけて成長を積み重ねるものであるのに対し、“Strategic Behavior”は、知っていれば今日からでも実践することができ、かつ、“プロフェッショナルっぽく”映る、極めてコスト・パフォーマンスの高いスキルセットです。

ちなみですが、上記のprofessional skillの中の「Dark-side Skill」についてご興味のある方は、是非、IGPIのメンバーが執筆した書籍、その名も「ダークサイド・スキル」をご笑覧頂けますと幸いです。

2. Strategic Behaviorの具体的内容

では、以下、私が考えるstrategic behaviorの具体的内容を徒然なるままに記載させて頂きます。法務担当者にとってのstrategic behaviorは「法務系 Advent Calendar」のコンテンツとしてまとめておりますので、ここで紹介するのは、コンサルタントのジュニア・スタッフ向けのstrategic behavior、すなわち、私自身がコンサルタントに転職した時にシニア・メンバーに指導頂いた内容(そして、現在、偉そうにジュニア・スタッフの方に日頃お話しさせて頂いている内容)です。

☑️ タイムリーレスポンス/タイムリーレポーティング
常に顧客やメンバーを“安心”させることを心がける。そのためには、こまめな情報共有が重要である。例えば、仕事を振られた場合に、成果物が完成して初めて返信するのでは0点。依頼を受けた段階で、①依頼を受領したこと、②成果物のfirst draftを提出する期限(例:○日の○時までに初稿をお送りします。)等をタイムリーに返信するだけでも印象が格段に上がる。

☑️ オーナーシップを持つ/ポジションを取る

ジュニアであっても自分自身がプロジェクト・オーナ/プロジェクト・マネージャであると考えて行動する。指示待ち人間は0点。積極的に自らポジションを取りに行き、プロジェクトにおけるプレゼンスを発揮する。

具体的にはどうすれば良いか。積極的に“提案”しながら動いてみる。「プロジェクトのデザイン」「成果物のイメージ」「スケジューリング」等について、稚拙でも良いから自分でまずは考えてみてそれを上長に提案してみる。

☑️ スケジューリングのプロになる
コンサルタントとして必須のスキルがプロジェクトマネジメントスキル。マネージャになったから身につくのではない。身についた者からマネージャになれる。プロマネにとって最も重要なのがスケジューリングスキル。ジュニアだからといってこれをプロマネ任せにしない。自分がプロマネならどうするかを考えて、プロマネに提案する(例:こういうスケジュールで成果物を準備しようと思いますが、これでよろしいですか?)。ポイントは、ゴールからの逆算思考。

☑️ プロジェクトの設計はゴールからの逆算=成果物は全体から個別の順で作り込む
プロジェクトが始まる前にゴール(最終到達地点)を決める。シニアとジュニアの大きな違いはゴールの解像度と実現可能性。プロジェクトのゴールを明確にかつ実現可能性のあるものを設定できてこそシニアのポジションを担うことができる。

プロジェクトが始まってから成果物を考え始めるのは0点の仕事。プロジェクトが始まる前に成果物の骨子(全体ストーリーと各スライドのイメージ)は完成していなければならない。プロジェクトはその仮説が正しいことを検証するための時間。

成果物の作成を任された場合に個々のスライドを作り込もうとするのは0点の仕事。まずは、担当パートの骨子(全体ストーリーの中のサブストーリー)を作り、それをシニア・メンバーに確認してもらう。骨子の作成はとにかくスピーディーに行う。

☑️ 歯車人間にならない=常に意味を考える

成果物作成において最も重要なことは何か?それは「結論」。なぜその資料が必要なのか?その資料で言いたいことは何か?これを最初に考える。もう一度言う、“最初に”考える。資料を作ってから考えるのは0点の仕事。仮説思考がなっていない。
個々のスライドも同じ。「とにかく情報を整理しました」みたいなスライドは0点の仕事。コンサルにとって情報を集めるのは料理の素材を集めるようなもの。情報(fact)から意味(implication)を導く(うまい料理を作る)のがコンサルの仕事

以上は、シニアもジュニアも同じ。成果物の一部の作成を任されたに過ぎないからといって、成果物の結論や作業の意味を深く考えるというプロセスを疎かにしない。

☑️ マルチタスクに慣れる
複数のアサインメントを同時並行でこなす能力(マルチタスク処理能力)はコンサルの必須スキル。マルチタスクの波に溺れそうになったときにはTODOを紙に書いて洗い出す。次に、優先順位を付けてみる。今日しなければならないものはどれか、明日できるものはどれかを可視化する。まずこの段階で多くの人は落ち着きを取り戻す。それでも今日しなければならないものが自身のキャパを超えているようであれば、メンバーに助けを求める。助けてくれないようなら辞める。

☑️ 質問する時点で答え(仮説)を持つ
質問は仮説の検証プロセス。相手に質問する時点で自分なりの答え(仮説)を持つ。相手からの答えと自分の仮説をぶつけてみて、仮説の正しさを検証する。YES/NO QuestionよりもOpen Questionを行うときほどこのことを意識する。つまり、自身の仮説を明確にしておく。

☑️ ロジを制する者はプロジェクトを制する
阪急グループの創業者である小林一三の言葉「下足番を命じられたら、日本一の下足番になってみろ。そうしたら、誰も君を下足番にしておかぬ。

ロジができる人間=仕事のできる人間、である。ロジは“徹底”することが重要である。つまり、“気を利かせる”ということを心がける。どうすればクライアントやメンバーがcomfortableに感じるかを考える(おもてなしの精神)。

例えば、出張の手配を頼まれたどうする?ホテルを一つ選んで終わる?それとも比較リストを作ってクライアントに選んでもらう?

また「出張が必要だからホテルを探しておいて」と頼まれたとき、それを文字通り受け取っても良い?交通手段を手配する必要はない?site-visitの後の打合場所の手配は?会食の設定は?手土産は?日帰りを希望する人がいた場合に備えた最終の新幹線・飛行機の時間確認は?依頼者は網羅的に指示を出しているわけではない。一つの指示を受け取ったときにその周辺事項にも気配りを見せられるかどうか、それがロジのキモ。

☑️ MTGのロジスティクスの設計こそジュニアの腕の見せ所と心得る
できるジュニアとそうでないジュニアの違いは“MTGのロジ”ではっきりと出る。会議のアジェンダが明確になっているか?アジェンダが事前に共有されているか?キーマンの参加がMUSTになっているか?MTGの仕切り(例:不要な議論のカット)ができているか?MTGの結論と関係者TODOが参加者に共有されているか?議事録がタイムリーに作成・共有されているか?
特に、議事録はタイムリーなものでなければ意味がない。原則は当日作成・当日共有。時間がない場合でも工夫の余地はある。議事録で重要なのは、①「MTGの決定事項」→②「残課題のTODO整理とアサインメント」→③「発言の要旨」→④「発言の反訳」の順。時間がないなら重要なもの、例えば、①②を直ちに作成し共有する。その際「残りは○日の○時までに送ります」と添えれば印象が格段に上がる。

☑️ 依頼者のニーズを尊重する
提案は重要。但し、その提示の仕方には配慮が必要。依頼者が「私の素人感覚ではAだと思うのですが、皆さんのプロの知見を下さい。」と言ったとする。このとき「A」と全く異なる「B」だけを提案しても絶対に刺さらない。依頼者の「A」という直感を最大限尊重する。「B」が最適解だと結論付けられたとしても、まずは「A」を徹底的に突き詰めた上で、Aに関する検証結果を依頼者に理解してもらう。その上で依頼者自身が「B」を選んだかのように話を持って行く。そのくらいの配慮がないと人は動かない。

☑️ 上司に1分もらう(上司に時間をもらえるような話し方を工夫する)
どんなに忙しくても「1分下さい」という部下のお願いを断る上司はいない。その代わり、1分で話をする。何を話すか?もちろん結論を話す。「○○の件でご相談です。○○の案で進めさせてください。」これで5秒。まだ55秒もある。上司がさらに詳細を知りたければ「もう少し詳しく説明して」と向こうから言ってくれる。そうしたら好きなだけ説明すればいい。

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