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M&A Contract Seminar: Tax Planning Vol. 2

クロス・ボーダーM&Aのタックス・プランニング(後半)

· 逆引MA書式,渉外法務

今回は、クロス・ボーダーM&Aのタックス・プランニングの概要(後半)について解説します。

【4】ステップ③−配当で資金を還流する−

 4-1 概要

(参考:加本・タックス160頁、佐和・国際税務80頁)

  • 配当に関する税務:JV社が取得した利益をJPN社に還元する方法として、ステップ③、すなわち、JV社からJPN社への配当という方法も考えられる。
    • 配当に関する税務については、“支払”と“受取”のそれぞれについて課税が生ずる可能性がある点に注意が必要である。
    • すなわち、この場合、海外子会社JV社は現地A国で支払に関する税金を納め、その残りを日本法人JPN社に支払い、日本法人JPN社は受取配当を更に益金として認識することになる。
  • 税務戦略:そこで、ステップ③については、タックスヘイブン対策税制が適用されないようなスキームを前提として、以下を検討する必要がある。
    • 現地国(A国)では、源泉徴収税の減免の余地(=租税条約の有無)を検討する。
    • 日本では、外国子会社配当益金不算入制度の適用を検討する。
  • その他の戦略:日本での課税を避けるべく、海外子会社に帰属した所得は日本の親会社に配当しないという戦略も考えられる。

 4-2 現地での課税−租税条約−

(参考:加本・タックス161頁、佐和・国際税務81頁)

  • 概略:現地での課税方式は、配当についての源泉徴収という形が通常である。
    • もっとも、源泉徴収とは異なる形態を採る国もある。例えば、インドの税法上、インド法人が配当を行う場合、配当支払法人に配当課税が課せられる。
  • 租税条約:税率は当該現地国の税制により異なるが、日本との間で租税条約を締結している場合には、より有利(=低率)な税率が定められていることが一般であるため、そのような優遇税制の有無と適用条件を確認する必要がある。

 4-3 日本での課税−外国子会社配当益金不算入制度−

(参考:加本・タックス160頁、佐和・国際税務80頁)

  • 概略:日本について検討すべきタックス・プランニングは、「外国子会社配当益金不算入制度」の適用を検討することである。これは、配当の支払元が「外国子会社」に該当する場合、配当の95%を免税とするものである。
  • 外国子会社:「外国子会社」とは、日本親会社がその発行済株式等の25%以上を配当等の支払義務が確定する日以前6か月以上引き続き保有している外国法人をいう。
    • 日本法人が25%の株式を保有していない場合には、日本の親会社ではなく、海外子会社に対象会社の株式を保有させて、当該海外子会社が対象会社からの配当を受けるという、いわゆる“中間持株会社”のストラクチャーを検討することになる。
    • 25%という持分比率は、租税条約により軽減されている場合があり、例えば、米国については10%以上の株式保有で当該制度の適用を受けることができる。
    • なお、国内法人による配当については「受取配当等の益金不算入制度」が適用され、当該配当法人の株式が「完全子法人株式等」(持株割合100%)に該当する場合は“受取配当金の全額”が、「関連法人株式等」(持分割合1/3超)に該当する場合は“受取配当金の全額から負債利子を控除した金額”が、「その他の株式等」(持分割合5%超1/3以下)に該当する場合は“受取配当金の50%”が、「非支配目的株式等」(持分割合5%以下)に該当する場合は“受取配当金の20%”が、それぞれ損金不算入となる。
  • 外国税額控除との関係:外国子会社配当益金不算入制度の適用を受けた場合、現地の配当源泉税には外国税額控除が適用されず、また、損金算入もできなくなる点に注意が必要である。

 4-4 中間持株会社の組成

(参考:加本・タックス163頁、佐和・国際税務139頁)

  • 中間持株会社がない場合:例えば、A国の配当源泉税が10%であり、かつ、日本との間で租税条約が締結されていない場合において、A国子会社Y社が100の配当を行うと、日本法人X社の最終的な課税負担は、以下のように“11.5”となる。
    • 11.5 = 100×10% + 100×95%×30%(注:日本の実効税率を30%と仮定)
  • 中間持株会社がある場合:これに対し、仮に、A国と配当源泉税を0%とする租税条約を締結するB国が存在し、当該B国においては支払源泉税もなく、また、受取配当も不課税とされている場合、B国に中間持株会社Z社を設立すれば、Y社の配当について課税負担なく、Z社への還流が可能となる。
  • 中間持株会社の組成方法:既に親会社Xが子会社Yを保有している場合において、中間持株会社Zを組成する方法としては、①X社が保有するY社株式をZ社に譲渡する方法②X社が保有するY社株式をZ社に現物出資する方法が考えられる。
    • ①ではZ社からX社に対する対価の支払いが必要となるため、現地B国において現物出資という方法が認められている場合には、②の方法が検討される。
    • ②の方法を用いる場合、日本では、原則として、現物出資対象資産であるY社株式について譲渡損益を認識する必要がある。もっとも、「適格現物出資」に該当する場合、税務上は譲渡損益を認識せず、Y社株式の簿価をZ社に付け替えることができる。

【5】ステップ④−株式譲渡で投下資本を回収−

 5-1 概要

  • 概略:JPN社による資金回収の最終段階では、ステップ④、すなわち、JPN社がその保有するJV社の株式を第三者に売却し、投下資本を回収することになる。このフェーズでは、主に、株式譲渡益(譲渡損)に関する日本における課税関係を検討することになるが、JV社所在国の税制によっては、現地における課税関係も検討する必要が生ずる

 5-2 日本での課税関係

  • 概略:売却価格が簿価よりも大きい場合には売却益(キャピタル・ゲイン)が生じ、小さい場合には売却損(キャピタル・ロス)が生ずる。JPN社の所在国である日本ではいずれも課税の際に考慮され、売却益は益金として課税金額を大きくし、売却損は損金として課税金額を小さくする。
  • 中間持株会社の利用:上記のとおり、JPN社の所在国である日本では、売却益は益金として法人税の課税対象となる。そこで、日本での課税を発生させないようにするため、キャピタル・ゲインを不課税とする国に“中間持株会社”を組成し、当該中間持株会社においてJV社の株式を保有した上で、将来のEXITの際には、当該中間持株会社がJV社の株式を譲渡するというスキームがとられることがある。
    • 但し、当該海外中間持株会社について日本のタックスヘイブン対策税制が適用されると、その所得が親会社である日本の法人の所得として合算されることになる(最判平成21年10月29日)。

 5-3 現地での課税関係

(参考:加本・タックス145頁、佐和・国際税務90頁)

  • 概略:JPN社に生ずる益金/損金の課税関係は、原則として、JPN社の所在国である日本の税制に照らして検討すれば足りる。もっとも、中国やインドのように、JV社所在国でも課税が行われる場合がある
  • 租税条約:このような制度が採用されている場合、両国間に租税条約により、当該所在地国での課税の減免が定められていることが多いため、租税条約の内容を確認する必要がある。
  • 外国税額控除:現地で課税された法人所得税については、基本的に日本において外国税額控除の対象となる。
  • 中間持株会社の利用:さらに、外国法人の株式(JV社の株式)を売却する代わりに、当該外国法人の株式を有する海外中間持株会社の株式を譲渡するという方法がある。
    • インドのボーダフォン事件では、この方法の適法性が争われたが、2012年1月に納税者勝訴の最高裁判決が確定した後、同年5月にインド政府が法律を改正し、このようなストラクチャーも租税の対象となる旨が法律上明らかとされた。
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