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M&A Contract Seminar: FDI Regulation

「外資規制とその対応スキーム」

· 逆引MA書式,渉外法務

今回は、クロス・ボーダーM&Aの頻出論点である「外資規制」の概要とそれを踏まえたストラクチャリングの実務について解説します。

【1】外資規制とは何か

  • 外資規制とは:外資規制とは、国内企業に対する外国投資に関する規制のことである。FDI(Foreign Direct Investment)規制等とも呼ばれる。
    • 規制内容として、①株式取得に関する規制の他、②許認可・出資等に関する手続的規制、③人事に関する規制、④土地取得に関する規制、⑤送金規制等がある。 
    • このような規制は、①国内産業保護(例:国内の特定の産業の外国資本からの保護)、②安全保障(例:国内の特定の技術の外国への流出防止)を目的として定められる例が多い。
  • 日本の外資規制:日本の場合、外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく規制と、個別業法(電波法、NTT法、放送法、航空法)に基づく規制がある。
    • 外為法の主な内容は、外国資本による内国資本の取得の制限であり、具体的には、同法が定義する「外国投資家」(同法26条1項)が「対内直接投資等」(同条2項)を行うにあたり、「国の安全等に係るもの」(同法27条3項)となる場合には、規制の対象(事前届出、中止勧告/命令)となる。
  • 海外の外資規制:海外の外資規制も、包括的な外資規制法(例:インドの統合版FDIポリシー、タイの外国人事業法)によって定められている場合の他、個々の事業法によっても外資規制が定められていることが多い。
     
  • 規制分野:外資規制の対象分野は、国により様々であるが、国内産業保護の観点から「小売業」等の分野が、安全保障の観点から「メディア」等の分野について、厳格な外資規制が定められることが多い。
    • 下表の読み方:下表は、外資規制の強弱を定量的に示した「OECD FDI Regulatory Restrictiveness Index」(2016年度版)を分野ごとに整理したものである。赤字はインデックスが0.300以上のもの、赤の網掛けはインデックスが0.500以上のものを表す。また、青字はインデックスが0.100未満のもの、青の網掛けはインデックスが0.000のものを表す。

【2】外資規制の対応方法①-株式保有を通じた対象会社の支配獲得方法-

  • 方法1-1:例外条件を検討する方法
    • 外資による出資が一定比率までしか認められていない場合であっても、資本金額が一定額以上の場合や、関連省庁の承認を得た場合等、例外的に規定比率以上の出資が認められる場合がある。
      • 資本金基準:タイでは、「小売業」や「卸売業」は規制対象業種とされているが、一定額以上の資本金(1億バーツ:約4億円)を備えた場合には、外資100%での参入も認められる。
      • グランドファーザ条項:これは、法令の改正前に承認を受けた投資については、改正後の新法の適用除外とするルールである。例えば、インドネシアにおいて、ネガティブ・リストの改正が行われ、外資比率が厳格化されたと場合であっても、既に認可された事業範囲を変更しない限り、改正後ネガティブ・リストは適用されないこととなっている。
  • 方法1-2:非外国人パートナーの協力を得る方法
    • 日本企業にとって友好的な“非外国人”パートナー(形式的には内資だが、実質的には外資が運営している会社)の協力を求めることにより、当該パートナーとの合計で過半数持分を取得する方法がある。 
      • 手数料の問題:このような“非外国人”パートナーから、議決権の共同行使等の対価として、手数料を求められる場合がある。 
      • アンタイ・ノミニー条項:国によっては、このようなノミニー利用(名義借り)が罰則付きで禁止されている例もある。
  • 方法1-3:種類株式の利用
    • 普通株式ではなく、種類株式を用いることにより、“持分比率”ベースでは外資規制未満に抑えながら、“議決権比率”ベースでは対象会社の過半数を取得する方法も考えられる。
      • デュアル・ストック:これは、1株複数議決権を認める株式である。これを日本法人が保有することにより、上記のようなスキームを組成することが可能となる。
      • 無議決権株式:これは、議決権を持たない株式である。これを現地法人に保有させることにより、上記のようなスキームを組成することが可能となる。
  • 方法1-4:ASEAN域内にSPCを組成する方法 
    • 外国直接投資であっても、ASEAN域内からの投資については、その他の地域からの投資に比べ、高い持分比率が認められる場合がある。このような場合、まず、ASEAN域内にSPCを組成し、当該SPCを経由して対象地域に投資を行うという方法が考えられる。 
      • インドネシアの例:例えば、インドネシアでは、公共事業分野について、高度な技術、高リスク、及び/又は、工事金額が500億ルピア超の建設業については、外資比率の上限が67%までとされているが、ASEANからの投資家である場合には、当該上限が70%まで引き上げられる。
      • このような例外は、ASEAN域内に所在する国同士が締結する投資協定(FTA/BIT)の中で定められている。

【3】外資規制の対応方法②-株式保有以外の手段による対象会社の支配獲得方法-

  • 方法2-1:合弁契約/株主間契約により支配を取得する方法
    • 出資比率や議決権比率ではマイノリティであるが、合弁契約や株主間契約により、対象会社の経営権を確保し(例:議決権の共同行使、拒否権、代表者や取締役の指名権)、その支配を獲得する方法が考えられる。
  • 方法2-2:他の法形式を利用し、実質的な支配を獲得する方法
    • 外資規制対象事業を運営する法人(例:小売事業を営むFRN社)には出資をせず、当該事業に必要不可欠なリソースを保有する会社(NewCo)を別途設立して当該NewCoに出資すると同時に、NewCoと事業運営法人(FRN社)との間でリソースの利用に関する契約(例:リース契約、ライセンス契約)を締結させることにより、間接的に外資規制対象事業を支配する方法もある。 
      • 資産会社モデル:NewCoに対象事業の不可欠資産(例:土地建物、知的財産権)を保有させ、NewCoと資本関係のない事業運営法人との間で、当該資産に関するレンタルやリース契約を締結する方法。
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    • フランチャイズモデル:NewCoが対象事業に関するフランチャイザーとなり、実際の運営はNewCoと資本関係のない事業運営法人(フランチャイジー)に行わせる方法。
    • ライセンスモデル:NewCoが対象事業に必要不可欠な知的財産権(例:ブランド、特許)を保有し、NewCoと資本関係のない事業運営法人との間で、当該知的財産権に関するライセンス契約を締結する方法。 
    • ローンモデル:NewCoが、資本関係のない事業運営法人に対して貸付けを行い、“デット・ガバナンス”に基づいて、事業運営法人を実質的に支配する方法。    
      • 貸金業法(昭和58年法律第32号)の規制に注意が必要である。
  • 方法2-3:あきらめる
    • 出資比率を外資規制上限以下に抑え、当面は、対象会社の支配を獲得しない前提での進出を検討する方法。
      • 将来的な見直し条項:将来の外資規制の緩和を見越して、株式の買増しができるような条項を契約の中に予め謳っておく。
      • 潜在株式の取得:株式の買増し(相株主からの株式取得や対象会社への追加出資)を“権利化”しておくために、コール・オプション、ストック・オプション、Convertible Bond(転換社債)等の潜在株式を取得しておく。

【4】外資規制の調査方法

  • 日本語で調べる
    • JETRO
    • 日本の法律事務所のNews Letter
  • 英語で調べる
    • 現地の海外投資所管省庁のWEBサイト
    • 現地の法律事務所のNews Letter
  • 現地法律事務所に調査を依頼する
    • 具体的なスキームを示した上で、代替案を提案させる。
    • 同業他社の進出事例を挙げて調査を依頼する。
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