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今回は、『事業担当者のための逆引きビジネス法務ハンドブック M&A契約書式編』の「種類株式」(P241)を解説します。
[6] 取得請求権付株式(P241)
- 取得請求=株主のプット・オプション
- 種類(P242)
- 償還型:株式と引き換えに“金銭”を交付するもの
- 実質的な“ローン”として利用
- 但し、分配可能額の制限あり(P243)
- 転換型:株式と引き換えに“株式”を交付するもの
- IPOのために普通株式に転換(自己の株式を上場株式に転換)
- 無議決権株式を議決権付株式に転換
- 1株を複数株式に転換
- 償還型:株式と引き換えに“金銭”を交付するもの
- 転換比率を変動させる例:希薄化防止条項(P249)

[7] 取得条項付株式(P252)
- 種類(P253)
- 償還型
- 実質的な“ローン”として利用
- 但し、分配可能額の制限あり(P253)
- 転換型
- IPOのために普通株式に転換(自社から種類株式を無くす)(P255、P263)
- 償還型
[8] 全部取得条項付株式(P255)
- スクイーズ・アウトの意義
- 次の株主構成の株式会社Xが存在する。
- 株主A:700株(70%)
- 株主B:200株(20%)
- 株主C:100株(10%)
- 株式会社Xを株主Aが100%支配する会社にするためにはどうすればよいか。
- 次の株主構成の株式会社Xが存在する。
- スクイーズ・アウトの手法
- Aが90%以上株主である場合
- 特別支配株主の株式等売渡請求を用いる方法
- なお、事例のように、Aが70%株主(2/3以上株主)であれば、第三者割当増資を対象会社に実行させ、持分比率を90%に上昇させることが可能(トップ・アップ・オプション)。
- 但し、資金調達目的のない第三者割当増資の適法性については争いがある。
- 特別支配株主の株式等売渡請求を用いる方法
- Aが2/3以上株主である場合
- 全部取得条項付種類株式を用いる方法
- 株式交換を用いる方法
- 株式併合を用いる方法
- 上記の3つのうち、法的安定性(少数株主保護)及び税務上の観点から、従来は「全部取得条項付種類株式」を用いる方法が採られていたが、会社法及び税制改正により、これらの3つの差はあまりなくなった。
- Aが90%以上株主である場合
- 株式併合を用いる方法
- 次の株主構成の株式会社Xが存在する。
- 株主A:700株(70%)
- 株主B:200株(20%)
- 株主C:100株(10%)
- 株主総会特別決議により、500株を1株に併合する。
- 株主A:1株+0.4株(株式100%)(端数40%)
- 株主B:0株+0.4株(株式000%)(端数40%)
- 株主C:0株+0.2株(株式000%)(端数20%)
- 端数の合計数に相当する数の株式(0.4株+0.4株+0.2株=1株)を以下の方法で現金化する。
- 競売
- 競売以外の方法による売却(裁判所の許可が必要)
- 株式会社Xによる取得
- 当該現金を端数割合に応じ、株主A、B、Cに分配する。
- 次の株主構成の株式会社Xが存在する。
[9] 拒否権(P260)
- 意義
- 株主間契約で拒否権を確保することとの違い(P221)
- 実効性担保:種類株主総会(P260)
- 拒否権の対象事項(P262)
[10] 取締役等の選任に関する条項例(P264)
[11] 種類株主総会の開催を不要とする条項(P266)
- 種類株主総会が必要な場合(P222、223、267)
- 種類株式の内容として必要とされている場合
- 拒否権付種類株式
- 役員選解任権付種類株式
- その他の場合
- 会社が所定の行為をすることにより、種類株主に損害を及ぼすおそれがあるとき(会社法322条1項)等
- 例①:A種優先株式にさらに優先するB種優先株式を発行する場合
- 例②:普通株式、A種優先株式(議決権付)、B種優先株式(無議決権)が発行されているところ、当社が合併により消滅することとなったため、各株主に対し、存続会社の普通株式(議決権付)が割り当てられる場合
- 会社が所定の行為をすることにより、種類株主に損害を及ぼすおそれがあるとき(会社法322条1項)等
- 種類株式の内容として必要とされている場合
- 論点整理
- 原則:「会社が所定の行為をすることにより、種類株主に損害を及ぼすおそれがあるとき」は当該種類株式の種類株主を構成員とする種類株主総会が必要
- 例外:種類株主総会の開催を不要とする定款の条項を定めることは可能
- 例外の例外:当該定款の条項を定めても、一定の事項(例:上記例①)については、種類株主総会の開催を排除することはできない
[12] 株主ごとの異なる定め(P268)
- 先回解説済み