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M&A Contract Seminar Ch. 3, Vol. 2

種類株式①

· 逆引MA書式

今回は、『事業担当者のための逆引きビジネス法務ハンドブック M&A契約書式編』の「種類株式」(P220)を解説します。

【1】種類株式の使い方

  • 前提
    • 発行会社:A社
    • 引受会社:B社
  • ケース①:A社は資金調達のためにB社に対し株式を発行したいが、既存株主の議決権比率を減らしたくないと考えている場合
    • [1] 剰余金の配当について異なる定めをした株式
    • [2] 残余財産の分配について異なる定めをした株式
    • [3] 議決権制限株式
    • ([5] 取得請求権付株式/[6] 取得条項付株式)
  • ケース②:B社はA社に対し貸付けで金銭を提供してもよいと考えているが、同時に、貸付期間中もA社に対し株主として厳しいモニタリングをしていきたいと考えている場合
    • [5] 取得請求権付株式
    • [6] 取得条項付株式
    • [8] 拒否権付種類株式
    • [9] 種類株主総会により取締役・監査役を選任できる株式
  • ケース③:B社は、無議決権株式による資金調達に応じてもよいが、A社の業績が落ち込んだ場合にはA社経営陣を解任し、自社から経営陣を派遣したいと考えている場合
    • [5] 取得請求権付株式
    • [9] 種類株主総会により取締役・監査役を選任できる株式
  • ケース④:B社はA社の株価を@100と主張し、一方、A社は自社の株価を@200と主張し、両者の溝が埋まらない場合
    • [1] 剰余金の配当について異なる定めをした株式
    • [2] 残余財産の分配について異なる定めをした株式
    • [3] 議決権制限株式
    • [5] 取得請求権付株式

【2】種類株式の価値評価

  • 設例
    • 1年後に@100で“償還”でき、また、その時点で普通株式1株に“転換”することができる種類株式(以下「本種類株式」という。)1株の価値はいくらか。なお、現在の普通株式の株価は@100であるとする。
    • なお、利率(割引率)は無視する。
  • 考え方
    • 前提となる仮説:1年後の普通株式の株価は以下の①②のいずれかしかないと仮定する。
      • ケース①(アップサイド):ある確率で1年後の普通株式の株価は@150となる:この場合は“転換”して、@150を得る。
      • ケース②(ダウンサイド):ある確率で1年後の普通株式の株価は@70となる:この場合は“償還”しかせず、@100を得る。
    • アプローチA:発生確率を仮定するアプローチ
      • ケース①の発生確率が50%、ケース②の発生確率が50%だとすると、本種類株式の価値は、次のとおり@125と計算される。(式)@150×50%+@100×50%=@125
      • しかし、アプローチAは、次の点で問題がある。
        • ケース①②の発生確率の設定が恣意的である。
        • 本種類株式のボラティリティ(特に、ダウンサイド)を考慮に入れていない。
    • アプローチB:普通株式と現金(借入)の組み合わせ(以下「本組合せ」という。)で種類株式を疑似的に設計するアプローチ
      • 普通株式X株と現金Y円の組み合わせにより、ケース①②のペイオフを再現する。
      • ケース①は次のように表すことができる:@150X+Y=150
      • ケース②は次のように表すことができる:@70X+Y=100
      • これを解くと、X=0.625、Y=56.25となる。
      • つまり、現時点において、X株を0.625株取得し、同時に現金を56.25保有すれば、ケース①②と同一のペイオフを実現することができる。
      • 求めたいのは、現時点における本組合せの価値であるから、@100X+Yに上記の値を代入すると、本種類株式の価値は@118.75と求められる。
      • このアプローチは、「二項モデル」(Binomial Model)と呼ばれ、オプション評価方法においてブラックショールズモデル(Black–Scholes Model)と並ぶ代表的な手法である。
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