今回は、『事業担当者のための逆引きビジネス法務ハンドブック M&A契約書式編』の「上場株式の取得」を解説します。

【ケース:サイドA】
X社は、上場会社A社(発行済株式総数1,000百万株)がB社と事業提携する計画を有していることを知り、A社を買収することを検討している。
- A社には、大株主である個人C氏(300百万株保有)がいるが、その他は一般株主である。
- X社は、まず、市場で7%取得した。
- X社は、その後、C氏と交渉し、同氏が保有する300百万株全部を取得することを計画している。
- 市場内取引/市場外取引(P49)
- なお、大量保有報告規制(P60)
- 公開買付規制(P51)
- 要件と効果(P52)
- 公開買付けに係る契約(cf:株式譲渡契約)
- 対象会社A社との契約(P57)
- 大株主C氏との契約(公開買付応募契約)(P58)
- インサイダー取引規制(P60)
- A社とB社の事業提携をC氏が知らなかった場合
- インサイダー取引
- A社とB社の事業提携をC氏が知っていた場合
- クロクロ取引
- 同じ事実を知っていること
- 転売の認識がないこと
- クロクロ取引
- A社とB社の事業提携をC氏が知らなかった場合
〔参考条文〕金融商品取引法 第166条(会社関係者の禁止行為)
1 次の各号に掲げる者(以下この条において「会社関係者」という。)であつて、上場会社等に係る業務等に関する重要事実(当該上場会社等の子会社に係る会社関係者(当該上場会社等に係る会社関係者に該当する者を除く。)については、当該子会社の業務等に関する重要事実であつて、次項第5号から第8号までに規定するものに限る。以下同じ。)を当該各号に定めるところにより知つたものは、当該業務等に関する重要事実の公表がされた後でなければ、当該上場会社等の特定有価証券等に係る売買その他の有償の譲渡若しくは譲受け、合併若しくは分割による承継(合併又は分割により承継させ、又は承継することをいう。)又はデリバティブ取引(以下この条、第167条の2第1項、第175条の2第1項及び第197条の2第14号において「売買等」という。)をしてはならない。当該上場会社等に係る業務等に関する重要事実を次の各号に定めるところにより知つた会社関係者であつて、当該各号に掲げる会社関係者でなくなつた後1年以内のものについても、同様とする。
…
6 第1項及び第3項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
…
(7) 第1項に規定する業務等に関する重要事実を知つた者が当該業務等に関する重要事実を知つている者との間において、売買等を取引所金融商品市場又は店頭売買有価証券市場によらないでする場合(当該売買等をする者の双方において、当該売買等に係る特定有価証券等について、更に同項又は第3項の規定に違反して売買等が行われることとなることを知つている場合を除く。)
- 発行開示規制(P59)
- 趣旨
- 有価証券の発行者に対し、証券情報(有価証券に関する情報)及び企業情報(発行者自身に関する情報)を開示する義務を課すものである。
- 規制の概要
- 有価証券の「募集」又は「売出し」を行う者に対し、「有価証券届出書」の提出義務を課すものである。
- 株式譲渡の場合
- 株式譲渡は「売出し」に該当する。
- もっとも、上場株式は「開示が行われている…有価証券」に該当するため、有価証券届出書の提出義務はない。
- 但し、有価証券通知書の提出義務がある。
- もっとも、当該有価証券の発行者等(発行者、その子会社・主要株主・役員等)以外の者が行うものについては、有価証券通知書の届出義務もない。
- 趣旨
【ケース:サイドB】
上場会社A社(発行済株式総数1,000百万株)の代表取締役Yは、X社がA社の大株主C氏(300百万株保有)から株式を取得し、同社を買収しようとしていると聞き、その対抗策を検討している。A社では海外進出のための資金が必要であったこともあることから、Yは、提携候補であるB社に対して株式300百万株を発行することにより、X社による買収を阻止しようと考えた。
- 株式発行の決定機関(P199、201)
- 公開買付規制(P203)
- インサイダー取引規制(P205)
- 発行開示規制(P204)
- 趣旨
- 有価証券の発行者に対し、証券情報(有価証券に関する情報)及び企業情報(発行者自身に関する情報)を開示する義務を課すものである。
- 規制の概要
- 有価証券の「募集」又は「売出し」を行う者に対し、「有価証券届出書」の提出義務を課すものである。
- 株式発行の場合
- 株式発行は「募集」に該当する。
- したがって、原則として、有価証券届出書の提出が必要となる。
- 株式の発行のたびに届出書の作成が必要となるのでは発行会社に煩瑣を強いることになる。そこで、発行登録書を予め提出し、株式の発行の際には発行登録追補書を提出するという方法が認められている。
- 趣旨